ザンスク

□temperatura
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「う゛お゛ぉ…冷てぇ…」


春になったとはいえ、まだ寒さの残るある日の夜、スクアーロは布団の中で体を丸めながら左手に一生懸命息を吐いていた。

鉄製の義手は外気の温度に忠実で。冷え切った義手は接している手首の温度をじわじわと奪い取っている。その冷たさに、スクアーロは眠れないでいた。

いっそ暖炉のそばに行って一気に暖めたい所だが、生憎体にはザンザスの腕が巻き付いてしまっているので、それは叶わない。ザンザスと抱き合っているのもあって体は暖かいのだが、その暖かさと手首の冷たさとの温度差が、余計にスクアーロを眠れなくさせていた。


必死に息を吹きかけ、左手を擦って暖めようとするがなかなか暖まらず。ついには暖炉の火も尽きてしまい、部屋を暖める術すら無くなってしまった。

途端に冷え始める室内に、スクアーロは体をぶるりと震わせる。
寒くて冷たくて、そんな状況に何故か孤独を感じてしまって。急に怖くなってきて涙腺がじわりと緩み、目をぎゅっと瞑ったその時、



「…大丈夫か」

「…!ザンザス…」


不意に話し掛けられ、パチリと目を開くと、瞼に閉ざされていたはずの紅い瞳がこちらを射抜いていた。

途端に安堵感でいっぱいになり、体中の力がふっと抜ける。と同時に目から零れそうになった涙に、スクアーロは慌てて目を伏せた。
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