文
□あめのちはれ!
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30.June
アイツの事は、成績優秀・容姿端麗、根は真面目でスカした奴、くらいにしか考えてなかったはず、だった。
それがいつから、奴を見る度にモヤモヤし始めた?
一緒に行動し始めた?
奴が付いてきた?
「……どうしたでござるか、晋助?」
「……。何でもねェよ。あっちいけ。」
「あっち行け、と言われても、拙者の席はここでござる。」
「俺もここだ。」
「………。」
「………。」
なんとなく空気が嫌で、目線を空に移した。
6月の空は澱む。
俺が、1番嫌いな雨の季節。
今日も灰色の空は、俺の気分を苛々させるんだ。
「……いい加減、テメーは欝陶しいんだよ……!」
心持ち声を大きくして叫んだって、騒がしいZ組の連中に聞こえてはいない。
「気がつきゃ付いて回って……俺を苛々させるのが趣味か?だったら趣味悪ィな。」
「………。」
黙らせた、と思った矢先、手首を掴まれて教室から引きずり出され、屋上へ向かう為の人の気ない階段まで連れていかれた。
すれ違う人も、俺の戸惑う声にも、万斉は耳を貸さない。
そうしてアイツは、やっと階段の踊り場で止まった。
「何すっ…「拙者が晋助の側にいたのは、主が空を見上げた時の顔を見たくなかったからでござる。主に、あんな哀しそうな顔はさせたくない。」
抵抗の言葉は、万斉らしくない早口でまくし立てられ消えた。
それ故理解するまで時間を要したが、理解したらしたで、顔から火が出る。
何を言ってるんだ、コイツは?!