Short
□You who were loved by me are a last lover.
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あの時の彼は酷いなんて状態じゃなかった。
もし、僕がもっと冷静だったら見ていられないような、そんな状態。
もう、放心状態だった。
何も考えられなかった。
神田は先日からラビと任務に就いていた。
探索部隊の報告では30体にも満たないほどのアクマのみ居たとのことだった。
イノセンスは関係ないにしろ、これ以上アクマによる被害を出す訳にはいかない。そんなコムイさんの判断により、二人のエクソシストと三人の探索部隊のみが派遣された。
そして、アクマの巣窟となっている森で別れて戦い始めた時までは順調だったのだそうだ。
だが、そのアクマの数は報告にあった量を優に超え、総計100を越えていた。
全てがレベル1や2ならまだしも、大半がレベル3。それに立ち向かうエクソシストはたった二人。
その数は負担でしかなかった。
そして、それだけならず、神田は命の残量とやらが残り僅か(よって大技は使えないとか)。更に、日ごろの無理が重なって、こんな日に限って体調不良。
最悪のコンディションだ。
その場で断ればよかったものの、プライドの高い神田はその程度なら、とあっさりOKを出し、こんな事態に及んでしまった。
まあ、そんな彼の性格のせいだけではなく、寧ろその大半の責任は探索部隊の調査不足にあるのだが。(責めるつもりはないけど)
それでも、愛刀の六幻と共に、割り当てられた場所のアクマを全て破壊することに成功。
したはずだった。
だが、やっと終わった、と一息ついた神田を背後から鋭い刃が襲った。
左肩を大きく抉られ、傾いた体。
慌てて背後を振り返ると不敵に笑うアクマの姿が視界に入ったのではないだろうか。
ドクドクと流れ落ちる鮮血。
最初の一撃くらいは恐らく、すぐに回復に向かったのだろう。
だが、ふらつく身体を立て直す前に降り注ぐ幾多の刃。
ズタズタに切り裂かれながらも、尚も六幻を構える神田を見、探索部隊は後ろ髪を引かれる思いでその場を去り、ラビに助けを求めにその場を後にした。
その間の状況は、立ち合った当人達しか知らない。
なぜなら、探索部隊がラビともう二人の仲間を連れて戻ってきた時にはもう、最悪の事態は終わっていたから。
彼らの目に映ったのは、横たわる神田の身体。
跳ね飛ばされ、近くに転がる美しき顔(かんばせ)の首。
そして、発動の解けた刀を握ったままの右腕と、何も握らない左腕。
ラビ達がたどり着いた時には神田は既にバラバラの死人と化し、一体のアクマがそれを楽しそうに見下ろしているという状況だったそうだ。
あまりの惨状に驚き、一瞬動けなくなったラビも隙を突かれ深手を負った。
が、最終的にはアクマを破壊し、ラビは探索部隊とバラバラの神田と共に教団に帰還したのだった。
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