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□Happy New Year!
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「神田。甘酒飲みたいです」

白髪の少年、アレンの言葉に先を歩いていた神田と呼ばれた青年はめんどくさそうに振り向き、顎で境内の奥の方を杓(しゃく)った。

「そうか、行って来い」
「どこですか?」
「知るかよ。あっちの方じゃねェのか」

素っ気ない対応にむっと唇をへの字に曲げると、今度は横に並んで歩いているラビに問いかける。

「ラビ。神田なんかほっといて連れてってください」
「ごめっ、俺も分かんね」
「え〜…甘酒飲みにわざわざ初詣来たのに〜」

不服そうに少し声を張り上げるアレンにラビは少しすまなそうな顔。ここが神田とラビの違いなのかな、と相変わらずの不機嫌顔で思う。真剣に思う。
神田もこれくらい優しかったらきっと女の人に大人気なのに、とも思った。
勿論どちらも口に出しはしなかったが。

僅かな会話の後、ぶーっと思いっきり頬をふぐのように膨らませ、どかどかと歩き始めた不機嫌丸出しのアレンに声をかける者がいた。勇者である。

「甘酒、いる?」
「え?」

その言葉と声をかけられたことに驚き、慌てて振り返ると、よく知った少女、リナリーがいた。

「り、リナリー…」
「はい。どうぞ」

ニコッと笑って差し出される紙コップ。
暖かいためコップの口から白い湯気が上がっている。それはもう、アレンにとっては喉から手が出そうな程に欲しいものだった。
…のだが、アレンは残念ながら紳士なのだ。しかも英国紳士。
そんな彼が女の子が自分が欲しいから貰ってきたはずのものを受け取れる訳がない。

「で、でも、リナリーが飲みたいから貰ってきたんでしょ?僕はいいですよ」
「ああ、気にしないで。私あんまり甘酒好きじゃないの。渡されたから貰っちゃっただけだし!ね?」

はい、ともう一度差し出されたそれを真剣な目で見つめるアレンがそれを欲しているのは一目瞭然だ。だが、それでも受け取ろうとしないアレンに今度はラビが言う。

「いいじゃん。くれるって言うんだから貰っとけよ」
「ね?」
「…は、はい!!じ、じゃあ頂きます!!」

その言葉で踏ん切りがついたのか、差し出された甘酒を受け取り、美味しそうに飲む姿はあげた方としてもうれしいものなのだろう。現にリナリーの表情はとても嬉しそうだった。



そんなこんなで辿り着いた賽銭箱の前。
少しながらでもみんな賽銭を入れ、横に並ぶ。何故かきついのに四人並んで手を合わせる。
そして一礼。

閉じた瞳の奥。
四人は何を願ったのだろうか…



今年も一緒にいられますように、と願った者はいただろうか…?



願い。その中身は神のみぞが知る。




>>>アトガキ
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