終焉の鎮魂歌<レクイエム>

□序曲
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白い月が照らす黒い部屋。
窓の縁で頬杖を突き、チェリーピンクの飴を舐める少女。
年齢にそぐわない表情で月を見上げていたが、背後からの気配に、視線を反らさないまま口を開いた。

「もうすぐだね、ティッキー…」

その言葉に、ふっと笑みを漏らし、ワイングラスを持ったまま、青年は少女の傍に歩み寄った。

「ああ…そうだな…」

囁くように言いながら、青年は持っていたグラスを白い月に翳した。
赤い月を見上げながら、唇の端に笑みを浮かべる。
それを横目で見ていた少女は何を考えたのか、青年の手にあったグラスを奪い取った。
慌てる彼を置いて、少女は手にしたグラスの中にあるワインを勢いよく飲み下した。そして、空になったワインを窓の外へ出し、逆さにする。
グラスの底から、つつっと残ったワインが滑り落ちる。
口からポタリと地へ落ちていくのを視界に収め、後を追わせるように逆さのままのグラスから手を離した。

ヒュウッ

重力に逆らうことなく墜ちていくグラス。

「墜ちちゃえばいいのにね…」

愁いを含んだ声でそう呟くと、少女は開いた扉の奥へ消えていった。



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