無限ノソウル

□あと10秒
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「―――――。」



痛みが走る。


下腹部に残る筋肉痛と、股関節の軋み。自分の肩を抱いて床に足を付けた。
ベッドを振り返ると少し乾いた血がシーツに点々とついていて、破瓜の名残が目に見える。
私を刺し貫いた男など、無防備な寝顔を見せたまま。枕に用意してくれた腕も伸ばしたまま、普段の尊大な態度とは似ても似つかない穏やかな顔で寝息を立てている。

服を着込もうと、シーツを巻いて下着を取りに行く最中、内股を伝う性交の証、彼の放った精の感覚に思わずその場に蹲った。

「………」

愛しい男に抱かれた証なのに
どこか満たされない。

それは彼からの愛情が欲しいから。
愛情を感じられない行為には溜め息が出る。彼に言ったのは確かに『お願い』という言葉を隠れ蓑にした『契約』。元々それに愛情などあってはいけない。

気怠い下肢は動きたがらない。
それを無理やり動かして服を着込んだ。

空に太陽はまだ出ていない。
カーテンを開けて現れる白む空を窓から見ながら、そっと視線を彼に移して。

「…さようなら。」

痛む体で歩を進め、扉までの距離がひどく近い事に溜め息またひとつ。
次、逢えるのはいつだろうか。もしかしたら―――

「……また今度。」

白む空の向こうから、光が差し込んだ。
考えを振り払い、扉に手を掛ける。


近すぎる距離


まだもう少しだけ
一緒にいたかった。


――――扉が閉まった。





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