短編小説 U
□有刺鉄線に啼く
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仄かに積もった苛々を取り払うべく、頭上の灰色を見上げれば、僅か先に鳥が円を描いて飛んでいた。
そこから視線を下げると、張り巡らされた有刺鉄線に落ちた鳥。
歩を早め、そこに辿り着いて見上げる。
赤黒い液体を垂れ流し、貫かれ息絶えた鳥。
その頭上で、只ひたすらに円を描く鳥。
ああ、世の中とはこんなものなのだ。
何となく、そんなことを思った。
それ以上にもそれ以下にも思えない自分に、多少の嫌気が差した。
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