短編小説 U
□That's for some reason
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「ああ、汚れてるよ。」
綺麗な顔が、台無しになってしまう。
急いでタオルを手に取った。
ごしごしと君の頬を拭う。
「…あ。」
ころん、と。
落ちたのは、君の澄んでいた瞳。
只の目玉になってしまった、君の瞳。
「…強く、こすり過ぎちゃったね。」
僕は笑って、君の目玉を押し込んだ。
元の場所で、もう僕を見ていない只の目玉を。
「…あははははっ。」
こうならなくても、元々僕など君は見ていなかった。
知っていたよ。
だから、いいんだよ。