短編小説 U
□曖昧 ヲ 笑 エ。
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丸くて黒いものを男は抱いている。
「今日は天気がいいな。」
「……」
男は空を見上げ、丸くて黒いものを叩いた。
「応えろよ。話せるだろ。」
男は笑顔で、丸くて黒いものを見る。
「痛いわ。」
丸くて黒いものは応える。
男は丸くて黒いものの髪をむしった。
「今日はいい天気だな。」
「痛い!痛い!」
「いい天気だ。」
丸くて黒いものは言った。
「扱いがひどいわ。」
男は今度は殴った。
「首だけの癖に偉そうにしやがって!」
黒い部分を掻き分けた。
丸くて黒いものから、顔が出てくる。
ぽいっ。
ベランダから、丸くて黒いものを投げた。
ぐしゃっ。
「今日はいい天気だな。」
男は笑って空を見た。