短編小説 U

□14ミリグラム
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我が儘なのだろうか。
きっと、我が儘なのだろう。
平坦から抜け出す術も意欲も無い癖に、誰かが連れ出してはくれ無いかと他人に期待している。
有り余る時間が与える疎外感に、浸りきっている癖に時折焦る。
窓から見えるは、誰一人いないいつもの風景。
白々しい月と、ニコチンまみれの肺を持つ私。
微かな虫の音と、不規則に揺れる薄煙。
のし掛かって来るのは、目の前の黒か現実か。


「やれば出来るんだから。」


母が口癖の様に言い続ける科白。
ふと浮かんで、思わず笑った。
渇いた笑い声を湿気の風が攫って行く。
やれば出来るだ何て、やらない私に何て可笑しな助言であろうか。
見当違いも甚だしい。
やらないのだから。
やるだけの意欲が無いのだから。
それにも関わらず私は。
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