短編小説 U
□愛を哲学する。
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暫く宙を彷徨ってから結ばれたであろう焦点をそのまま私に移して、彼が口を開いた。
「…寝てた?」
「…寝てましたよ。」
嫌みと言うよりは呆れに近い声でそう応えた。
「…ごめん。」
思い出したかの様にそう呟いた彼に、思わず笑った。
それが本音であろうことは、何となく解った。
「…気にしてないよ。疲れてるんでしょ。」
優しくその髪を撫でれば、逆らうことなくそちらに意識を引き摺られて行く様で。
「…愛してるよ。」
朦朧とする意識の端で彼が零した科白は、聞き間違いでは無い筈。
「…根本原理、哲学、ねえ…。」
呟きと共に私が零した笑みは、柔らかかったに違い無い筈。
end。