短編小説 U

□華の砦
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てんてんてん



てんてんてん



鞠のつく音だけが、やたらと耳を掠める。



てんてんてん



何故だろう。

決して大きくは無い、寧ろ木々の囀りに掻き消されてしまいそうな音なのに。



てんてんてん



誘われる様にその方へ足を進めれば。
森の中、急に開けた視界一杯に真っ赤な曼珠沙華が咲き乱れていた。



「…砦?」



何の砦であろうか。

不自然なまでに辺りを染める赤の向こうに、寂れた石造りの小さな砦が在った。
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