短編小説 U
□後悔に堕ちて
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ねえ泣かないで。
「…何で。」
ねえ泣かないで。
「…どうして。」
あたしを抱き締めた腕に力を込めて、君は首元に顔を埋めたまま、そう呟きを零すけれど。
泣いて欲しい訳じゃないの。
ただ笑って見送って欲しいだけなの。
「…先に、逝かないでよ…。」
その言葉は酷く甘美で、そして酷く現実味を帯びて鼓膜を刺激した。
「…ごめんね。」
そう応えたのが最期の言葉。
ああ、どうして。
どうして最期なのにこんな言葉。
後悔と共に、意識は闇に堕ちた。
end。