短編小説 U

□さよならのために
1ページ/1ページ

愛は深くて広く、恋は浅はかで初々しい。
両方を兼ね備えて他人を慈しむなど、そんな器用な真似は出来ない。


「大切だったよ。」


彼が言う。


「私もよ。」


それに応える。

交わる視線の先に、いつか見た甘く拙い未来が過ぎった気がした。
大切だからこそ、自らより愛しく思うからこそ、私達はこの道を選ぶ。

愛は深くて広く、恋は浅はかで初々しい。
育んできたもの。
それはきっと、いつまでも胸に痼りを残すだろうけれど。


「    。」


最後の笑顔が、あなたに自由をもたらすものであればいいと言い聞かせ、呟く言葉に思いを乗せた。

全ては、さよならのために。



end。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ