短編小説 U
□愛してる
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「ねえねえ、これはどうかな?」
「あっ、こっちの方がいい?」
すぐ傍で笑う彼女の声が、何故か酷く遠くに聞こえた。
曖昧な笑みを浮かべ、それでも内心を悟られない様、必死になっている私の何と馬鹿らしいことか。
「どっちでも似合うよ。」
そんな私の葛藤に気付くだろう筈も無く、隣に座る彼が嬉しそうに目を細めてそう言った。
嬉しそうに。
それはそれは、しあわせそうに。
満ち足りた表情とはこういう顔を言うのだろうと、頭の片隅でぼんやりと思った。
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