短編小説 U
□That's for some reason
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ぐちゃぐちゃの中を駆け回る。
滑る足元に何度も転びながら、それでも僕は駆け回る。
「ねえ、楽しいねえ!」
繋いだ手をぶんぶん振り回せば、生白い腕も一緒に揺れた。
楽しい。
何て楽しいのだろう。
嬉しい。
何て嬉しいのだろう。
君と僕の二人だけの世界は、こんなにも鮮やかに染まっている。
「…どうして早く、気付かなかったのかなあ。」
視線を投げれば、君は何も言わずにそこにいる。
ああ、しあわせ。
一緒にいられることが、凄くしあわせだ。
繋いだ手を離して、勢いよく君を抱き締めた。
受け入れて貰うこと、
傍にいられることが、
こんなにもしあわせだとは、知らなかった。