短編小説 U

□14ミリグラム
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煙草が止められ無い。
無ければ無いで困ることなど無い代物。
それにも関わらず、これに対する私の依存は重く大きい。
毎日は平坦だ。
大した波風も立たず、変化に富むことも無く、緩やかに過ぎ行く時間を只々無駄に過ごしている。
夜中の四時に窓を開ける。
湿気を含んだ入梅の風は、この時間帯だけは心地良く身に染みる。
月明かりに白く立ち昇る薄煙に、知らず自分を重ねた。


「…何だかなあ。」


一人零した呟きは、誰に拾われるでも無く黒に解けて行く。
何かを背負っている訳では無い。
何かに追い立てられている訳でも無い。
フリーターという類に属する私は、ある意味とても自由だ。
この生活に何ら不平も不満も無いに違い無いのだ。
それなのに。


「…はあ。」


ゆらゆらと漂っては解けて行く煙に、吐き出される溜め息は止め処無い。
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