短編小説 U

□この感情は何に似て
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「…時間、か。」


純白に身を包んだわたしは、今日この日、犠牲の上に成り立つ偽りの幸福を手に入れる。

彼は来てくれているだろうか。

戻れない道。
戻せない過去。
選んだ道。
選んだ先。
選んだのは、紛れもなくわたしだ。

あの高台での最後のひとことを思い出す。


「…すきだったよ。」


臆病過ぎたわたし達の最後に縮んだ距離感。

この感情は、あの静寂に似て。



end。
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